マンション管理士 過去問
令和7年度(2025年)
問14 (マンションの管理に関する法令及び実務 問14)

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問題

マンション管理士試験 令和7年度(2025年) 問14(マンションの管理に関する法令及び実務 問14) (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンション304号室を所有するAが、Bとの間で、同室を賃料月額12万円でBに賃貸する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結し、同室をBに引き渡した。Aが本件契約に基づく賃料債権を譲渡する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  • 本件契約に基づく賃料債権について譲渡を禁止する旨の特約がある場合には、Aが同債権を譲渡しても、その効力は生じない。
  • Aは、本件契約に基づく将来の賃料債権を譲渡することはできない。
  • Aが、本件契約に基づく令和7年8月分の賃料債権をCに譲渡した後、同債権をDにも譲渡し、その旨をそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合、いずれの譲渡が優先するかは、確定日付の先後によって決まる。
  • Aが本件契約に基づく令和7年9月分の賃料債権をEに譲渡し、その対抗要件が具備された場合であっても、Bは、その対抗要件具備時より前に取得したAに対する債権を自働債権とし、上記の賃料債権を受働債権とする相殺をもってEに対抗することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

民法の債権譲渡の規定に関して、2020年の民法大改正(以下、単に大改正と略します)による変更点が主に問われています。

選択肢1. 本件契約に基づく賃料債権について譲渡を禁止する旨の特約がある場合には、Aが同債権を譲渡しても、その効力は生じない。

(誤り)譲渡禁止特約の存在を理由に、債権譲渡の<効力は生じない>という箇所が誤りです。大改正前は確かに、特約があれば譲渡自体が無効でした。しかし、大改正後の第466条第2項は「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」と変わりました。

 なお、Aから債権の譲受人へと賃料の支払先が変わることになるBの立場で見ると「譲渡禁止と特約していたのに‥‥」と困惑するかもしれません。譲受人が特約を知っていた場合などには、Bは譲受人への支払いを拒めるという仕組みでバランスを取っています(第466条第3項)。この場合は引き続きAに支払うことになります。


 

選択肢2. Aは、本件契約に基づく将来の賃料債権を譲渡することはできない。

(誤り)今はまだ発生していない<将来の賃料債権>について、<譲渡することはできない>という箇所が誤りです。賃料は毎月支払うものですが、将来債権の譲渡は大改正前も判例では認められていました。大改正後の第466条の6で「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」、つまり、将来発生する債権も譲渡することができると明文化されました。

選択肢3. Aが、本件契約に基づく令和7年8月分の賃料債権をCに譲渡した後、同債権をDにも譲渡し、その旨をそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合、いずれの譲渡が優先するかは、確定日付の先後によって決まる。

(誤り)債権の二重譲渡を巡り<いずれの譲渡が優先するかは、確定日付の先後によって決まる>という箇所が誤りです。その<確定日付のある証書>がBに到達した時点の先後で決まります(判例)。証書に付された確定日付は第三者に対抗する要件として重要です。ただ、支払先がAから、CとDのどちらに変わるかについて、最も利害関係があるのがBであることは間違いありません。そのBに、不動産登記における登記所のような、情報センターの役割を委ねる、という趣旨です。

選択肢4. Aが本件契約に基づく令和7年9月分の賃料債権をEに譲渡し、その対抗要件が具備された場合であっても、Bは、その対抗要件具備時より前に取得したAに対する債権を自働債権とし、上記の賃料債権を受働債権とする相殺をもってEに対抗することができる。

(正しい)大改正後の第469条は「債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる」と明文化しました。本肢で言えば、次の通りなので、正しい選択肢となります。

 ・賃料の支払い義務がある債務者のBは、

 ・譲渡人Aとの間でく対抗要件具備時より前に取得したAに対する債権>を自働債権として、

 ・譲受人Eが譲り受けた<賃料債権を受働債権とする相殺をもってEに対抗することができる>

まとめ

2020年以後に学習を始めた方は大改正後の民法しかご存じないでしょう。ただ、試験問題を作る側から見れば、民法大改正は今もまだ大きなトピックです。民法の他の論点と比べて、相対的に出題可能性は高いと考えられます。

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02

債権の譲渡に関する問題です。

選択肢1. 本件契約に基づく賃料債権について譲渡を禁止する旨の特約がある場合には、Aが同債権を譲渡しても、その効力は生じない。

当事者が債権の譲渡を禁止し、

又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、

債権の譲渡は、その効力を妨げられません(民法466条2項)。

 

したがって、本件契約に基づく賃料債権について譲渡を禁止する旨の特約がある場合であっても、

賃貸人Aが同債権を譲渡すれば、

その効力は生じるので、

本肢は誤りです。

選択肢2. Aは、本件契約に基づく将来の賃料債権を譲渡することはできない。

債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しません(民法466条の6第1項)。

したがって、賃貸人Aは、

本件契約に基づく将来の賃料債権を譲渡することもできるので、

本肢は誤りです。

選択肢3. Aが、本件契約に基づく令和7年8月分の賃料債権をCに譲渡した後、同債権をDにも譲渡し、その旨をそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合、いずれの譲渡が優先するかは、確定日付の先後によって決まる。

まず、債権の譲渡は、

「譲渡人Aが債務者Bに通知をし」、

又は債務者Bが承諾をしなければ、

債務者Bその他の第三者に対抗することができません(民法467条1項)。

 

前項の「通知」又は承諾は、

「確定日付のある証書」によってしなければ、

債務者B以外の第三者に対抗することができないとされています(民法467条2項)。

 

本肢のように、

それぞれ確定日付のある証書によって債務者Bに通知した場合、

いずれの譲渡が優先するかは、

確定日付の先後によってではなく、

「確定日付ある通知が債務者に到達した日時」で決まります(最判昭49.3.7)。

選択肢4. Aが本件契約に基づく令和7年9月分の賃料債権をEに譲渡し、その対抗要件が具備された場合であっても、Bは、その対抗要件具備時より前に取得したAに対する債権を自働債権とし、上記の賃料債権を受働債権とする相殺をもってEに対抗することができる。

債務者Bは、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人Aに対する債権による相殺をもって、

譲受人Eに対抗することができます(民法469条1項)。

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03

本問は債権譲渡にまつわる判例及び条文知識を問う問題です。
基本事項ばかりなのでぜひとも正解してほしい問題です。

 

債権譲渡は、
①債権は譲渡制限特約があろうと未発生の将来債権だろうと自由に譲渡できる。できないのは性質上の譲渡不能債権のみ。
②債権譲渡の対抗要件(債務者に対する対抗要件と債務者以外の第三者に対する対抗要件)
③債務者に対する対抗要件具備までに譲渡人に対して生じた事由は全て譲受人に対しても主張できる。
 相殺に関しては、対抗要件具備の時点で相殺適状になくても自働債権となる反対債権の取得が対抗要件具備前であれば足りる。
という程度のことを知っておけば概ね十分です。
②については、選択肢の解説で述べます。

選択肢1. 本件契約に基づく賃料債権について譲渡を禁止する旨の特約がある場合には、Aが同債権を譲渡しても、その効力は生じない。

「正しいもの」ではありません。

 

債権について譲渡禁止特約を付けることは可能ですが、譲渡禁止特約付き債権であっても有効に譲渡できます

譲渡禁止特約付き債権の譲渡であっても、譲渡自体は完全に有効であり、譲受人等が譲渡禁止であることを知っていたか又は重過失により知らなかった場合に債務者が譲受人等に対して履行拒絶等ができるに留まります。

 

民法第466条「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。」

選択肢2. Aは、本件契約に基づく将来の賃料債権を譲渡することはできない。

「正しいもの」ではありません。

 

将来発生する予定の債権の譲渡は有効です。

 

民法第466条の6「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

 

民法第467条第1項かっこ書き「(現に発生していない債権の譲渡を含む。)」

選択肢3. Aが、本件契約に基づく令和7年8月分の賃料債権をCに譲渡した後、同債権をDにも譲渡し、その旨をそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合、いずれの譲渡が優先するかは、確定日付の先後によって決まる。

「正しいもの」ではありません。

 

債権を二重に譲渡してそれぞれについて確定日付のある証書による通知があった場合、その優劣は、通知の到達の先後で決まります。

 

最判昭和49年3月7日(裁判例結果詳細 | 最高裁判所)
「民法467条の対抗要件制度の構造に鑑みれば、債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によつて定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によつて決すべき」

 

民法第467条「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ債務者以外の第三者に対抗することができない。」

 

簡単に言えば、二重の通知を受けた債務者は、先に届いた通知に弁済すれば免責されるという意味です。
立て続けに届けば良いですが、間が空くこともあり得ます。
確定日付が早い通知が後から届いたときに既に先の通知の方に弁済してしまっていたら困るでしょう?ということです。

 


ここで第467条の解説をしておきます。

第1項は、譲渡人と譲受人間では債権譲渡が有効であることを前提に、債務者に対して譲渡人が通知するか又は債務者が譲渡人若しくは譲受人のいずれかに承諾をしないと、当事者以外には譲渡を主張できないという規定です。
第2項は、第1項では通知又は承諾は形式を問わないが、確定日付のある証書によるもの以外は、債務者にしか主張できないという話です。
当事者及び債務者以外の者に主張したければ通知にしろ承諾にしろ、確定日付のある証書によることが必要だということです。

そして、確定日付による通知又は承諾が効いてくるのは、典型的には債権の二重譲渡で各譲渡の譲受人同士の関係です。
それぞれの譲渡において譲受人は当事者ですが、他方の譲渡については無関係な第三者です。
そこで一方の譲受人が他方の譲渡の譲受人に対抗するには確定日付による通知又は承諾が必要です。


もし仮に確定日付のある証書による通知が両方の債権譲渡について債務者に届いていたか又は債務者の確定日付のある証書による承諾が両方の譲受人に届いていた場合には、優劣を決める条文がありません。
判例はその場合には、到達の先後で決めるべきとしたわけです。

 

なお、到達も同時だったらどうでしょう?
判例では両方が「全額」請求できます

 

最判昭和55年1月11日(裁判例結果詳細 | 最高裁判所)
「指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に第三債務者に到達したときは、各譲受人は、第三債務者に対しそれぞれの譲受債権についてその全額の弁済を請求することができ、譲受人の一人から弁済の請求を受けた第三債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由がない限り、単に同順位の譲受人が他に存在することを理由として弁済の責めを免れることはできない」

 

と言っても、債務者は両方に弁済する必要はありません。
先に請求してきた方に払えば、もう一方に対しては免責されます。

まだ払っていないのに、他にも譲受人がいるからという理由で弁済を拒否できないだけです。

払ってしまえば債務は消滅するので、後は、譲受人同士で白黒つけてくれと丸投げすればいいのです。
又は、債権者不確知(誰が債権者か特定できない)という理由で供託をすることができます。
手間は掛かりますが、こちらの方が後腐れなく丸投げできます。

選択肢4. Aが本件契約に基づく令和7年9月分の賃料債権をEに譲渡し、その対抗要件が具備された場合であっても、Bは、その対抗要件具備時より前に取得したAに対する債権を自働債権とし、上記の賃料債権を受働債権とする相殺をもってEに対抗することができる。

「正しいもの」です。よってこの肢が正解です。

 

債権譲渡が行われ譲受人が債務者に対する対抗要件を具備した場合であっても、当該債権の債務者は、当該債権譲渡の対抗要件具備の前に取得した譲渡人に対する債権を自働債権(相殺する側の債権)として譲渡に係る債権を受働債権(相殺される側の債権。相殺する側にとっては債務)とする相殺をすることができます。

 

民法第469条第1項「債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。」

 

これは、取得が対抗要件具備前なら構わないので、取得した時点では自働債権の弁済期が未到来で対抗要件具備後に到来して相殺適状となったものでも構いません。
ただし、譲渡時において自働債権の弁済期が未到来で相殺適状にないのであればその時点ではまだ相殺はできません。
ですから、受働債権の弁済期が先に到来する場合、自働債権の弁済期到来前に受働債権の履行請求があれば、相殺をもって履行請求を拒むことはできません。

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