マンション管理士 過去問
令和7年度(2025年)
問4 (マンションの管理に関する法令及び実務 問4)
問題文
甲マンションにおいては、建物の一部の階段室に手すりを設置することを議案とする集会を開催することとなった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。2つ選べ。
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問題
マンション管理士試験 令和7年度(2025年) 問4(マンションの管理に関する法令及び実務 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
甲マンションにおいては、建物の一部の階段室に手すりを設置することを議案とする集会を開催することとなった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。2つ選べ。
※ 令和8年(2026年)4月1日に改正区分所有法が施行されました。これに伴い元となる設問文を一部改題し、現行法に沿う形に修正しました。
<参考>
- 集会の招集の通知を送るに当たっては、議案の要領を通知しなければならない。
- 規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議がなければ、決めることができない。
- 専有部分が2人の共有に属する場合、議決権を行使する者が定められていなかったときは、管理者は、集会の招集の通知を共有者の1人に発すればよい。
- 集会の決議が成立した場合であっても、階段室に接する専有部分の区分所有者の承諾を得ていなければ、その決議は無効である。
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この過去問の解説 (3件)
01
本問のポイントは2つです。
①本肢の <建物の一部の階段室に手すりを設置する>ことは、建物の基本的構造部分を壊すようなものではないため、原則として「共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)」または「管理行為」に該当します。
②26年4月1日施行の改正区分所有法(以下、単に法と略します)により、集会の招集通知のルールが変わり、全ての議案に関して議案の要領を通知することになりました(これに伴い正解肢が2つになっています)。
(正しい)法第35条第1項は「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しないものを除く。)に発しなければならない」と規定しています。すべての集会の招集通知で、議題(=会議の目的たる事項) と、具体的な決議内容(=議案の要領)を示す必要があります。
本肢で言えば「手すり設置の件」という議題に加え、どのような手すりをどこに設置するかという概要も、全区分所有者に知らせる義務があります。
法改正前は「議案の要領」の通知は、規約変更や建替えなどの重要事項に限定されていました。このため、軽微変更または管理行為に当たる<議案の要領を通知しなければならない>という本肢は、改正前の令和7年度本試験では誤りでしたが、現時点では正しい選択肢ということになります。
(誤り)本肢の議案は軽微変更または管理行為に当たるので、出席した区分所有者及び議決権の各過半数による普通決議で決することができます。<各4分の3以上の多数による集会の決議がなければ、決めることができない>という本肢は誤りです。
(正しい)法第35条第2項は「専有部分が数人の共有に属するとき」の集会の招集通知の送り先について、共有者のうち「議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる」と定めています。議決権行使者が定められていない本肢では<共有者の1人に発すればよい>という記述は正しいです。共有者全員に通知する必要はありません。
(誤り)区分所有法第17条第2項は「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない」と定めています。
ここで言う「特別の影響」とは、受忍限度を超える不利益を与えることです。そのような不利益を多数決で少数者に押し付けることは許されません。そのため特別の影響を受ける区分所有者の個別の承諾が必要とされています。
手すり設置のような軽微変更または管理行為が特別の影響を及ぼすとは考えづらいので、常に<階段室に接する専有部分の区分所有者の承諾>が必要とする本肢は誤りです。
集会の招集通知を巡っては「少なくとも一週間前」という通知の発送期限でも改正点があります。この期限が改正前は「伸縮」可能でしたが、「伸長」可能に改まりました。全ての議案に関して「議案の要領」を通知することと合わせ、じっくり考える時間を最低1週間は確保しなければならないという趣旨です。
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02
正しい記述は、集会の招集通知に議案の要領を示さなければならないというものと、議決権を行使する人が決まっていない場合は、共有者の1人に招集通知を送ればよいというものです。
令和8年4月1日に施行された改正区分所有法では、集会の招集通知に関するルールが変更されました。また、階段への手すりの設置は、建物の形や働きを大きく変えない工事であるため、原則として普通決議で決めることができます。
適切です。
集会を開くときは、会日の少なくとも1週間前までに、会議の目的となる事項と議案の要領を示して、各区分所有者に通知しなければなりません。
議案の要領とは、何について、どのような内容を決めようとしているのかが分かる説明です。この問題では、階段室に手すりを設置することや、その工事内容などを通知する必要があります。
不適切です。
階段に手すりを追加する工事は、建物の基本的な構造部分を大きく壊すなどの工事を伴わなければ、共用部分の形や働きを大きく変えるものではありません。
このような工事は、共用部分の管理に関する事項として、原則として普通決議で決めることができます。現行法における普通決議は、規約に別の定めがなければ、出席した区分所有者と、その議決権の各過半数で成立します。
そのため、区分所有者と議決権の各4分の3以上の賛成は必要ありません。
適切です。
夫婦など2人以上で1つの専有部分を共有している場合、共有者は、その専有部分について議決権を行使する人を1人決めます。
議決権を行使する人が決められているときは、その人に招集通知を送ります。一方、議決権を行使する人が決められていないときは、共有者のうち1人に通知すれば足ります。
共有者全員に通知する必要はありません。
不適切です。
共用部分の工事が、特定の専有部分の使用に特別な影響を与える場合には、その専有部分の区分所有者の承諾が必要です。
ただし、階段室に専有部分が接しているというだけで、必ず特別な影響があるとは限りません。
例えば、手すりを設置したことにより、玄関の出入りが大きく妨げられるなどの事情があれば、承諾が必要になる可能性があります。しかし、単に階段室に接しているだけで、当然に承諾が必要となるわけではありません。
集会の招集通知には、会議の目的となる事項と議案の要領を示す必要があります。
専有部分が共有されている場合は、議決権を行使する人が決められていればその人に、決められていなければ共有者の1人に通知すれば足ります。
また、建物の基本的な構造を大きく変えない手すりの設置は、原則として普通決議で決めることができます。専有部分の区分所有者の承諾が必要となるのは、その専有部分の使用に特別な影響が生じる場合です。
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03
本問は、建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)の集会決議に関する規定の知識を問う問題です。
集会は、区分所有建物の管理運営の基本方針を決める重要な手続きなので、必ず出題される分野と言っていいです。
実務的にも重要なところであり、しっかり学習しておきましょう。
議決に関しては、2026年(令和8年)4月1日施行の改正法で数字の基準が変わっていますから、その点も抑えておかなければなりません。
「正しいもの」です。よってこの肢は正解です。
集会の招集通知には、議案の要領を必ず示さなければなりません。
区分所有法第35条第1項本文「集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しないものを除く。)に発しなければならない。」
従来、議案の要領が必要なものは一部の重要な議案に限られていました。
しかし、2026年(令和8年)4月1日施行の改正区分所有法により、集会の決議要件が出席区分所有者を基準にするように変更されたため、集会への出欠の判断自体が重要になりました。
そのため、出欠自体の判断に資するよう、すべての議案について要領を示すように改正されました。
なお、招集通知は1週間前に通知を発することになっていますが、標準管理規約では2週間前です。
標準管理規約(単棟型)第43条「総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の 目的がマンション再生等に係る決議であるときは2か月前)までに、会議 の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その 開催方法)、目的及び議案の要領を示して、組合員に通知を発しなければ ならない。」
また、従来は、この通知の期間制限は規約で短縮も可能でしたが、今は1週間未満に短縮することはできなくなりました。
これも、決議要件の変更により出欠の重要性が増したことが影響しています。
改訂していない管理規約で短縮したものがあればその規定は無効となり、1週間前の通知が必要になります。
「正しいもの」ではありません。
共用部分の軽微変更については、特別多数による決議ではなく通常の管理と同様の普通決議によります。
ですから、集会に出席した議決権を有する区分所有者の頭数で過半数かつ議決権の過半数で決議ができます。
階段室に手すりを設置することは、通常は、共用部分の「形状又は効用の著しい変更」には当たりません(単に手すりが付くだけですから形状はほぼ何も変わりませんし、階段としての効用に何らかの変更を及ぼすわけでもありません)から軽微変更となります。
また、議決数についても、2026年(令和8年)4月1日施行改正区分所有法では、従来の区分所有者全員を基準とするものから出席区分所有者を基準とすることに変更になっていますので、その点でも正しくありません。
区分所有法第17条第1項「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第5項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項及び第3項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3(これを下回る割合(2分の1を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決する。」
同法第18条第1項「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」
ただ単に「集会の決議で決する」と書いてある場合は、区分所有法第39条第1項に定める普通決議の規定が適用されます。
前条の場合というのは軽微でない共用部分の変更の場合なので、軽微変更は普通決議ということになります。
同法第39条第1項「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。」
「正しいもの」です。よってこの肢は正解です。
専有部分が共用である場合、集会の招集通知は共有者を代表して議決権を行使する者に対してする必要がありますが、その者が定められていない場合には、共有者の誰でもいいので誰か一人に対してするだけでよいです。
区分所有法第35条第2項「専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。」
同法第40条「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもつて、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。」
なお、重箱の隅を突く話をすると、条文上は「議決権行使者を決めろ」とは書いてありますが「それを届け出ろ」とは書いてありません。
そうすると、決めてあっても届けていないので管理組合が知らないということが起こり得ます。
その場合どうなのか?と言えば、ほぼ常識的な話として、本条は、単に議決権行使者を決めるだけにとどまるものではなくそれを管理組合に告知することまで含む趣旨だとなるわけですが、標準管理規約にその点についての記載があります。
標準管理規約(単棟型)第46条第3項「前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。」
ちなみに、議決権行使者を決めるにあたって、「各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもつて」という基準は、従来明確な規定がありませんでしたが、2026年(令和8年)4月1日施行改正法で明確化されました。
この基準自体は民法の共有物の管理者の選任と同じです。
従来、実務通説で民法252条を基準としていたものを改正で明文化したものです。
民法第252条第1項「共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。」
「正しいもの」ではありません。
共用部分の変更に係る集会決議において専有部分の所有者の承諾が必要なのは、「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきとき」だけです。
通常、階段室に手すりを設置したところでそこに隣接しているだけの専有部分の使用に特別の影響はありません(特別でない影響すらないのが普通です)。
区分所有法第17条第2項「前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」
なお、もしかしたら特別の影響があるかも知れないと考えることはできなくはありませんが、出題が「無効である」と言い切っている点で「特別の影響がある」と言っているに等しいので、特別の影響がある「かも知れない」程度では本肢を「正しいもの」とすることはできません。
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