マンション管理士 過去問
令和6年度(2024年)
問30

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問題

マンション管理士試験 令和6年度(2024年) 問30 (訂正依頼・報告はこちら)

マンションの敷地内に設置された集会室において、管理規約に定める使用方法に反する利用を繰り返し、集会室内の共用設備を破損する行為を行っている者(この問いにおいて「迷惑行為者」という。)に対する管理組合の対応に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。
  • 迷惑行為者が区分所有者である場合、当該破損する行為は建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同利益に反する行為であるとして、他の区分所有者の全員が区分所有法第57条に基づきその停止等を請求する訴訟を提起するときは、総会決議が必要である。
  • 迷惑行為者が近隣の住民である場合、理事長がその者に対し、設備の破損に係る損害賠償を請求する訴訟を提起するためには、総会決議が必要である。
  • 迷惑行為者が賃借人である場合、賃貸人である区分所有者がその者に対し何ら是正措置を講じなかったときは、理事長は、理事会の決議を経て、その区分所有者に対しても設備の破損に係る損害賠償を請求することができる。
  • 迷惑行為者が賃借人の同居人である場合、理事長は、理事会の決議を経て、その者に対し、当該行為の差止めを請求することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

様々な属性の「迷惑行為者」が、マンションの集会室を雑に扱っているようです。

選択肢1. 迷惑行為者が区分所有者である場合、当該破損する行為は建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同利益に反する行為であるとして、他の区分所有者の全員が区分所有法第57条に基づきその停止等を請求する訴訟を提起するときは、総会決議が必要である。

適切。区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合には、他の区分所有者の全員は、区分所有者の共同の利益のため、以下のいずれかのための必要な措置を執ることを請求することができます(区分所有法57条1項)。

 

(1)その行為を停止

(2)その行為の結果を除去

(3)その行為を予防

 

上記の請求だけであれば総会決議は不要ですが、訴訟を提起するには、集会の決議によらなければなりません(区分所有法57条2項)。

選択肢2. 迷惑行為者が近隣の住民である場合、理事長がその者に対し、設備の破損に係る損害賠償を請求する訴訟を提起するためには、総会決議が必要である。

不適切。区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとることができます(標準管理規約67条3項2号)。

 

区分所有者でないからと言って、決議のハードルが上がるわけではありません。

選択肢3. 迷惑行為者が賃借人である場合、賃貸人である区分所有者がその者に対し何ら是正措置を講じなかったときは、理事長は、理事会の決議を経て、その区分所有者に対しても設備の破損に係る損害賠償を請求することができる。

適切。専有部分の貸与を受けた者が、法令、規約又は使用細則等に違反した場合には、区分所有者は、その是正等のため必要な措置を講じなければなりません(標準管理規約67条2項)。

 

それにもかかわらず、上記の区分所有者がその者に対し何ら是正措置を講じなかったときは、理事長は、理事会の決議を経て、敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとることができます(標準管理規約67条3項2号)。

選択肢4. 迷惑行為者が賃借人の同居人である場合、理事長は、理事会の決議を経て、その者に対し、当該行為の差止めを請求することができる。

適切。別肢と同様の規定です。

専有部分の貸与を受けた者の同居人が、法令、規約又は使用細則等に違反した場合には、区分所有者は、その是正等のため必要な措置を講じなければなりません(標準管理規約67条2項)。

 

それにもかかわらず、上記の区分所有者がその者に対し何ら是正措置を講じなかったときは、理事長は、理事会の決議を経て、行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができます(標準管理規約67条3項1号)。

まとめ

標準管理規約67条には、「若しくは」「又は」などの接続語や、「その」のような指示語が多用されているため、適切に読み取る必要があります。

 
and及び並びに
or若しくは又は

 

ex)区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)

【区分所有者等】
1.(1)区分所有者
  (2)その[区分所有者の]同居人
2.(1)専有部分の貸与を受けた者
  (2)その[専有部分の貸与を受けた者の]同居人

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02

「適切でないもの」を選ぶ問題なので、「適切でない」を〇で囲うか下線を引いて、正誤の選択を間違わないようにしましょう。

選択肢1. 迷惑行為者が区分所有者である場合、当該破損する行為は建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同利益に反する行為であるとして、他の区分所有者の全員が区分所有法第57条に基づきその停止等を請求する訴訟を提起するときは、総会決議が必要である。

適切な肢です。

 

区分所有法第57条1項では

"区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。"と規定されています。

 

また、同2項において、

"前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。"とされています。

 

したがって、適切な肢となります。

選択肢2. 迷惑行為者が近隣の住民である場合、理事長がその者に対し、設備の破損に係る損害賠償を請求する訴訟を提起するためには、総会決議が必要である。

不適切な肢です。

 

区分所有法第26条第1項では、

"管理者は、共用部分並びに第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第47条第6項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。"と規定されています。

 

同条第4項においては、

"管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第2項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。"とされています。

 

選択肢「迷惑行為者が近隣の住民である場合」ですので、「規約又は集会の決議により、・・・原告又は被告となることができる。」こととなります。

 

 

規約または集会の決議により」なので、標準管理規約を見てみましょう。

 

標準管理規約第67条第3項では、

"区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。"

 

区分所有者等以外の第三者が・・・・理事会の決議を経て」となっています。

 

同条同項2号には"敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること"とされています。

 

以上より、選択肢「総会決議が必要である」部分が不適切で、正答な肢となります。

選択肢3. 迷惑行為者が賃借人である場合、賃貸人である区分所有者がその者に対し何ら是正措置を講じなかったときは、理事長は、理事会の決議を経て、その区分所有者に対しても設備の破損に係る損害賠償を請求することができる。

適切な肢です。

基本的な考え方は、同居人の場合と一緒です

 

①標準管理規約第67条第2項では、

"区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。"と規定されています。

 

②そして、標準管理規約第67条3項では、

"区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。"

とされています。

 

次の措置」は、同条同第2号"敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること"です。

 

 

①で区分所有者に責任を負わせ、②で区分所有者に責任追及ができる。

 

したがって、適切な肢となります。

選択肢4. 迷惑行為者が賃借人の同居人である場合、理事長は、理事会の決議を経て、その者に対し、当該行為の差止めを請求することができる。

適切な肢です。

基本的な考え方は、賃借人の場合と一緒です。

 

①標準管理規約第67条第2項では、

"区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。"と規定されています。

 

②そして、標準管理規約第67条3項では、

"区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。"

とされています。

 

次の措置」は、同条同第2号"敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること"です。

 

 

①で区分所有者に責任を負わせ、②で区分所有者に責任追及ができる。

 

したがって、適切な肢となります。

まとめ

選択肢「迷惑行為者が近隣の住民である場合」に、「理事会の決議」ではなく「集会の決議」で損害賠償請求訴訟が起こせるかどうか考えてみると、区分所有法及び標準管理規約の理解が深まると思います。

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