マンション管理士 過去問
令和6年度(2024年)
問17

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問題

マンション管理士試験 令和6年度(2024年) 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンションの301号室を所有するAが管理費を滞納したまま死亡した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  • Aが死亡した際に、その相続人のあることが明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の清算人の選任を請求することができる。
  • Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、家庭裁判所の許可を得なければ甲マンションの301号室を売却することはできない。
  • Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、甲マンションの管理組合に対しAが生前に滞納した管理費を直ちに支払わなければならない。
  • Aが死亡した際に、その相続人はあるが、その所在が明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の管理人の選任を請求することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

甲マンション管理組合にとっては若干ヒヤヒヤする状況であることをイメージしましょう。

選択肢1. Aが死亡した際に、その相続人のあることが明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の清算人の選任を請求することができる。

正。相続人のあることが明らかでない場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければなりません(民法952条)。

したがって、「利害関係人」にあたる甲マンション管理組合は本肢の通りに請求することができます。

選択肢2. Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、家庭裁判所の許可を得なければ甲マンションの301号室を売却することはできない。

正。相続財産の清算人は、以下の権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができます(民法28,103,953条)。

 

【民法103条に規定する権限】

(1)保存行為

(2) 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 

「甲マンションの301号室を売却すること」は上記の権限を超える行為にあたるため、本肢は正しいです。

選択肢3. Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、甲マンションの管理組合に対しAが生前に滞納した管理費を直ちに支払わなければならない。

誤。まず、相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければなりません(民法952条2項)。

 

上記の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければなりません(民法957条)。

 

本肢の甲マンション管理組合は「相続債権者」にあたるため、まずは上記の公告を行うことになります。

したがって、清算人は、甲マンションの管理組合に対しAが生前に滞納した管理費を"直ちに"支払う必要はありません。

選択肢4. Aが死亡した際に、その相続人はあるが、その所在が明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の管理人の選任を請求することができる。

正。家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができます(民法897条の2)。

 

利害関係人→甲マンション管理組合

いつでも→Aの相続人が所在不明でも本肢の請求可

まとめ

本問の論点が出題されたことは滅多にないですが、落ち着いて考えれば何となくで正解できる問われ方です。

試験本番で問われても焦らないことが大切です。

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02

誤っている肢を選ぶ民法の問題です。

 

問題文に「民法の規定によれば、誤っているものはどれか。」のように下線を引くなどして対応しましょう。

選択肢1. Aが死亡した際に、その相続人のあることが明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の清算人の選任を請求することができる。

正しい肢です。

 

民法第951条では"相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。"と規定されています。

 

民法第952条第1項では、"前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。"と規定されています。

 

「Aが死亡した際に、その相続人のあることが明らかでない」

「相続財産は法人とする」

「甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の清算人の選任を請求することができる」

となり、正しい肢となります。

 

なお、甲マンションの管理組合は利害関係人です。

選択肢2. Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、家庭裁判所の許可を得なければ甲マンションの301号室を売却することはできない。

正しい肢です。

 

民法第103条に"権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。"と規定されています。

"次に掲げる行為"とは、保存・利用・改良です。

 

民法第28条に"管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。"と規定されています。

 

甲マンション301号室の売却は、保存・利用・改良を超える行為なので、民法28条の通り、家庭裁判所の許可が必要となります。

選択肢3. Aの相続財産の清算人が選任されたときは、清算人は、甲マンションの管理組合に対しAが生前に滞納した管理費を直ちに支払わなければならない。

明らかに誤った肢です。

 

民法第957条第1項では"第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。"と規定されています。

 

青字部分より、少なくとも2か月の申出期間が設けられるため、「Aが生前に滞納した管理費を直ちに支払わなければならない。」ということはありません。

選択肢4. Aが死亡した際に、その相続人はあるが、その所在が明らかでないときは、甲マンションの管理組合は、家庭裁判所に対し相続財産の管理人の選任を請求することができる。

正しい肢です。

 

民法第897条の2第1項では"家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。"と規定されています。

 

家庭裁判所は「相続人はあるが、その所在が明らかでないとき」には、相続財産の保存のため、相続財産の管理人の選任を命ずることができます。

まとめ

問題自体は、民法のディープなところを聞いてきています。

ただ、明らかに間違った肢があるため、皆得点してくるところだと思われます。

 

マンション管理士試験は、合格率8%程度の難関試験です。

皆が得点してくるところは落とさないようにしましょう。

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