マンション管理士 過去問
令和6年度(2024年)
問14

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問題

マンション管理士試験 令和6年度(2024年) 問14 (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンションの101号室を所有者Aから賃借したBが、その不注意により風呂の浴槽から溢水(いっすい)させて同室内の床を水浸しにしたため、床の修繕が必要になった場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、101号室は契約の内容に適合していない点はなかったものとする。

  • Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、その損害賠償請求権は、Bの溢水(いっすい)によって床の修繕が必要になったことをAが知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅する。

  • Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、Bがこれに応じないときは、Aは、BがAに差し入れた敷金を損害賠償債務の弁済に充てることができる。
  • BがAに床の修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときには、Bは自らその修繕をすることができる。
  • 不注意により風呂の浴槽から溢水(いっすい)させた者がBではなく、Bの同居の配偶者Cであった場合には、Aに対し、Cが損害賠償責任を負うとともに、Bも損害賠償責任を負う。

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この過去問の解説 (2件)

01

A所有の部屋にBが賃借して住んでいる、そのような様子がイメージできるように簡単な図をメモして状況を整理しましょう。

選択肢1.

Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、その損害賠償請求権は、Bの溢水(いっすい)によって床の修繕が必要になったことをAが知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅する。

誤。AB間は賃貸借の契約関係で結ばれているため、「一般の債権」の時効が適用されます。

債権者Aが権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しない場合には、債権は時効によって消滅します(民法166条1項)。

3年間」というのは不法行為の時効が適用される場合の規定ですので、区別して覚えましょう。

選択肢2. Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、Bがこれに応じないときは、Aは、BがAに差し入れた敷金を損害賠償債務の弁済に充てることができる。

正。賃貸人Aは、賃借人Bが賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができます(民法622条の2第2項)。

選択肢3. BがAに床の修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときには、Bは自らその修繕をすることができる。

正。次に掲げるとき、賃借人Bはその修繕をすることができます(民法607条の2)。

 

1.(1)賃借人Bが賃貸人Aに修繕が必要である旨を通知したとき

   かつ

   (2)賃貸人Aがその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人Aが相当の期間内に必要な修繕をしないとき

 

 または

 

2.急迫の事情があるとき

 

 

本肢は(1)に該当するので、まずは賃貸人に相談し、対応してもらえなかったら賃借人で自力解決できるという流れをイメージしましょう。

選択肢4.

不注意により風呂の浴槽から溢水(いっすい)させた者がBではなく、Bの同居の配偶者Cであった場合には、Aに対し、Cが損害賠償責任を負うとともに、Bも損害賠償責任を負う。

正。賃借人Bは債務不履行で、同居の配偶者Cは不法行為で、それぞれ賃貸人Aに対する損害賠償責任を負うことになります(民法415,709条)。

まとめ

賃貸借という一つのテーマの中でいずれも基礎知識ではありますが、民法の様々な論点から出題された複合的な問題といえます。

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02

「不法行為による損害賠償責任」「賃貸借契約上の損害賠償責任」かなどしっかり把握しましょう。

選択肢1.

Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、その損害賠償請求権は、Bの溢水(いっすい)によって床の修繕が必要になったことをAが知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅する。

誤った肢です。

 

民法第166条1項1号で"債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。"に債権は時効によって消滅するとされています。これは賃貸借契約に基づくものとなります。

 

民法第709条には、"故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。"とあり、その時効は3年です。こちらは不法行為に基づくものとなります。

 

どちらの規定を使って損害賠償請求するかは所有者A次第です。

 

3年で民法第709条の不法行為責任の追及はできなくなりますが、賃借人Bは、溢水させないようにする賃貸借契約上の善管注意義務をAに対して負っており、その時効は上記の通り5年となります。

 

このため、3年が過ぎても5年までは損害賠償請求することが可能となります。

選択肢2. Aは、Bに対し、損害賠償請求をすることができるが、Bがこれに応じないときは、Aは、BがAに差し入れた敷金を損害賠償債務の弁済に充てることができる。

正しい肢です。

 

民法第622条2第2項では"賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

と規定されています。

 

条文赤字部分どおり、正しい肢となります。

 

 

なお、賃貸人から「敷金を充てますよ」は言えますが、賃借人から「敷金を充ててください」は言えません。

選択肢3. BがAに床の修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときには、Bは自らその修繕をすることができる。

正しい肢です。

 

民法607条の2第1号では、"賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき"とされており、この場合に"賃借人は、その修繕をすることができる。"とされています。

 

条文通り、賃借人Bは自らその修繕をすることができます。

選択肢4.

不注意により風呂の浴槽から溢水(いっすい)させた者がBではなく、Bの同居の配偶者Cであった場合には、Aに対し、Cが損害賠償責任を負うとともに、Bも損害賠償責任を負う。

正しい肢です。

 

賃借人Bの同居の配偶者Cと賃貸人Aは、直接の契約関係にありません。

このため、不注意による溢水を起こしたCは賃貸人Aに対して民法709条の不法行為による損害賠償責任を負います。

 

賃借人Bも、同居の配偶者Cに溢水させないようにする義務があり、民法第415条の債務不履行責任に基づく損害賠償責任を負います。

まとめ

純粋に考えれば正答を導くことが容易なのですが、個人的には、この設問は奥が深いと考えています。

 

問題を解いていて沼に足がはまりそうになったら、とりあえず保留にして次の問題に行きましょう。

後に控えている確実に得点できる問題で得点を稼ぐべきです。

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