マンション管理士 過去問
令和3年度(2021年)
問13

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問題

マンション管理士試験 令和3年度(2021年) 問13 (訂正依頼・報告はこちら)

滞納されているマンションの管理費(この問いにおいて「滞納管理費」という。)の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  • 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対して、内容証明郵便をもって累積している滞納管理費分の支払の請求をした場合には、6ヵ月間の時効の完成猶予の効力が生じるが、その期間中になされた再度の支払の請求には、時効の完成猶予の効力が生じない。
  • 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対する支払の催告に基づく時効の完成猶予期間を経過した後に、その支払額や支払方法について、あらためてAと協議を行う旨の合意が書面でなされたときには、その合意から1年を経過した時、協議期間を定めている場合にはその期間を経過した時、当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する通知を書面で送付した場合にはその通知の到達から6ヵ月を経過した時、の最も早い時まで時効の完成猶予が認められる。
  • 管理費を滞納している区分所有者Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、管理組合が滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効の更新の効力は生じない。
  • 滞納管理費の存在が、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した場合には、その時効期間は10年である。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は2です

1 正しいです。民法150条2項の定めの通り、催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効完成しません。この催告によって時効の完成が猶予されている間の催告は、時効の完成猶予の効力を有しません。

2 誤りです。民法151条の定めの通り、催告に基づく時効の完成猶予期間を経過すれば、時効が完成するので、その後に協議を行う旨の合意されたとしても、この合意には時効の完成猶予の効力は生じません。

3 正しいです。民法147条1項4号の定めの通り破産手続開始は、時効の完成猶予事由に該当し、破産債権の届出をすれば、時効の完成は猶予されますが、時効の更新されるのは、確定判決又それと同一の効力を有するものによって権利が確定したときから、破産債権が確定したときにはじめて時効の更新の効力が生じます。

4 正しいです。民法169条1項の定めの通り、確定判決又は同一の効力を有するものによって確定した権利は、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年となります。

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02

 時効に関する出題です。本問題では、試験ではよく使われる消去法による解答方法となります。そのためにも、重要な論点でもありますので、しっかりと理解を深めてください。

選択肢1. 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対して、内容証明郵便をもって累積している滞納管理費分の支払の請求をした場合には、6ヵ月間の時効の完成猶予の効力が生じるが、その期間中になされた再度の支払の請求には、時効の完成猶予の効力が生じない。

 民法150条1項2項によると、「催告があったときは、その時から6ヵ月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない。」とされているので正しいです。

選択肢2. 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対する支払の催告に基づく時効の完成猶予期間を経過した後に、その支払額や支払方法について、あらためてAと協議を行う旨の合意が書面でなされたときには、その合意から1年を経過した時、協議期間を定めている場合にはその期間を経過した時、当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する通知を書面で送付した場合にはその通知の到達から6ヵ月を経過した時、の最も早い時まで時効の完成猶予が認められる。

 民法151条1項により、「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から一年を経過した時、その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時、当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6ヵ月間を経過した時、のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。」とされ、同条3項により、「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた1項の合意は、時効の完成猶予の効力を有しない」とされます。

 問題文からは、支払の催告に基づく時効の完成猶予期間を経過した後に、本来の時効期間が経過しているかは不明なので、本来の時効期間が経過していなければ、民法151条1項の時効の完成猶予は認められるとする解釈もありますが、他の問題との関係から、完成猶予期間を経過した後に、本来の時効の期間が経過していると、試験問題作成者は想定しているようですので、誤りということになります。

選択肢3. 管理費を滞納している区分所有者Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、管理組合が滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効の更新の効力は生じない。

 民法147条1項4号によると、「破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加の事由がある場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は、完成しない。」とされるので正しいです。

 つまり、破産債権として届出をしただけでは、時効の更新の効力は生じません。

選択肢4. 滞納管理費の存在が、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した場合には、その時効期間は10年である。

 民法169条1項によると、「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。」とされるので正しいです。

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03

滞納管理費の消滅時効に関する問題です。

選択肢1. 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対して、内容証明郵便をもって累積している滞納管理費分の支払の請求をした場合には、6ヵ月間の時効の完成猶予の効力が生じるが、その期間中になされた再度の支払の請求には、時効の完成猶予の効力が生じない。

正。たしかに、催告があったときは、

その時から6ヵ月を経過するまでの間は、

時効は完成しません(民法150条1項)。

 

しかし、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、

前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しません(民法150条2項)。

選択肢2. 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対する支払の催告に基づく時効の完成猶予期間を経過した後に、その支払額や支払方法について、あらためてAと協議を行う旨の合意が書面でなされたときには、その合意から1年を経過した時、協議期間を定めている場合にはその期間を経過した時、当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する通知を書面で送付した場合にはその通知の到達から6ヵ月を経過した時、の最も早い時まで時効の完成猶予が認められる。

誤。たしかに、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、

次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、

時効は完成しません(民法151条1項各号)。

 

一 その合意があった時から1年を経過した時

二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時

三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6ヵ月を経過した時

 

しかし、「催告に基づく時効の完成猶予期間を経過した後」であれば、

そもそも時効が完成している可能性が高いです(民法150条1項)。

 

その状態で、「支払額や支払方法について、

あらためてAと協議を行う旨の合意が書面でなされた」のであれば、

それはもはや「権利の承認」とみなされ、

時効が更新する可能性があります(民法152条1項)。

 

したがって、管理費を滞納している区分所有者Aに対する支払の催告に基づく時効の完成猶予期間を経過したことによって、

仮に時効が完成していたり、

その後の対応で権利の承認とみなされたりしたのであれば、

少なくとも時効の完成猶予は認められません。

 

若干疑義が生じる選択肢ではありますが、

別肢と比較すると、

本肢が最も誤りに近いといえます。

選択肢3. 管理費を滞納している区分所有者Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、管理組合が滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効の更新の効力は生じない。

正。原則として、

次に掲げる事由が終了するまでの間は、

時効は完成しません(民法147条1項4号)。

 

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法上の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停

四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

 

したがって、管理費を滞納している区分所有者Aが自ら破産手続開始の申立てをし、

破産手続開始の決定がなされた場合であっても、

管理組合が滞納管理費債権について破産債権として届出(≒破産手続参加)をしただけでは、時効の完成猶予はできても時効の更新の効力は生じません。

 

時効の更新の効力が生じるためには、

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することが必要です(民法147条2項)。

選択肢4. 滞納管理費の存在が、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した場合には、その時効期間は10年である。

正。確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とします(民法169条1項)。

まとめ

実務でも滞納管理費については、

たしかな法律知識に基づく毅然とした対応が求められます。

何とか食らいついていきましょう。

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